リブランディング

「ブランディングが重要」、現在のマーケティングを語る上で必ず俎上に上る言葉です。商品のブランド価値は企業の利益に直結します。そのため、自社や自社の商品のブランディングを行うことで、他社との差別化を図り、消費者への浸透を狙う企業が増えています。それを受け、既存ブランドへのテコ入れとして、近年は「リブランディング」という考え方が注目を浴びています。読んで字の如く「ブランドを再構築する」試みだとは思うのですが、本当にブランドは「再構築」できるのでしょうか?

今回は、現在のマーケティングにおけるブランドの持つ意義を踏まえて、「リブランディング」について考えてみたいと思います。

市場や顧客の変化に対応するために、既存ブランドの在り方を見直し、再構築する

「リブランディング(Rebranding)」は「商標変更」を意味する英単語ですが、マーケティングの場では「ブランドの再生」や「ブランドの再構築」という意味でよく使われています。

一度は市場に定着したブランドも、市場や顧客の変化に合わせて、その価値が変わっていきます。特にインターネットが発展した現代では、多種多様な情報が溢れたことでコンテンツの消費が激しく、消費者の興味の対象は次から次へと移り変わってしまいます。

そのため、ブランドもすでに獲得したそのポジションを維持するだけでは足りず、リブランディングにより、こうした市場や顧客の変化に合わせてブランドの在り方を見直し、より適した形へと再構築することが求められるのです。

具体的にリブランディングが求められるケースは、ブランドを展開してみたものの、今一つ成果が見られない場合、順調に浸透していたはずのブランドに陰りが見え始めた場合、既存のブランドを別の市場に投入する場合などが考えられます。

リブランディングは、まずは消費者への認知から始まる新規ブランドの立ち上げに比べれば、コストやリソースを抑えることができるため、企業が取り組むハードルとしては低くなりますが、既存のイメージを打開する必要があるため、別の難しさがあるのもまた事実です。
安易な気持ちで取り組んでは、状況を悪化させてしまうため注意が必要です。

安易なリブランディングは既存の顧客の反感を招き、ブランドそのものを失墜させる

では、実際にリブランディングが行われる際、どのようなことが行われるのでしょうか?
一般的に行われるのは、ブランドロゴや商品名、パッケージやブランドスローガンの変更です。ブランド一新のイメージを強く印象付けるには、消費者の視覚に訴えかけることが一番です。そのため、消費者から見えやすい、ブランドの「外側」に位置するものを変更していくことが効果的なのです。しかし、それは既存の顧客が愛着を持っていた部分を変更することにもつながります。思いつきによる変更は顧客の混乱を招き、最悪、顧客離れを引き起こし兼ねません。

かつてアメリカで「コーラ戦争」というものが行われたことがあります。「コカ・コーラ」を販売するザ コカ・コーラ カンパニーと「ペプシコーラ」を販売するペプシコの間で行われた比較広告合戦で、世界各地でマーケティング競争が繰り広げられました。そのコーラ戦争の最中、ペプシコーラに打ち勝つために、ザ コカ・コーラ カンパニーは、「コカ・コーラ」をリブランディングし、味とブランドロゴを一新した「ニュー・コーク」という新商品を投入しました。

しかし、既存のコーラとの入れ替えで投入されたニュー・コークは顧客の反感を招き、抗議が殺到することになりました。結局、わずか3カ月で既存のコーラが「コカ・コーラ・クラシック」という名前で再販売されることになりました。
顧客を無視した企業主導のブランディングは失敗するケースが多いですが、それはリブランディングでも変わらないということです。

リブランディングは企業のためなのか?顧客のためなのか?

そもそも「ブランディング」とは、ブランドを通じて商品やサービスへのイメージを顧客と共有することにより、その価値を高めていくことを指します。そのため、企業と顧客の関係性がブランドには大きく反映されるのです。

ブランドは一体「誰のもの」なのでしょうか?
リブランディングが行われる際、企業が苦境に立たされているケースが多々あります。自社の利益を追求するために、ブランドの再構築を行います。企業の経営方針として、そこに間違いはありません。しかし、WEBマーケティングやコンテンツマーケティングが主流となっている今、顧客とのつながりが重視され、顧客の存在を無視した経営を行う企業は徐々に淘汰されつつあります。

最後に、トヨタ自動車株式会社の事例を紹介しておきます。

東日本大震災に見舞われた2011年の10月、トヨタは「FUN TO DRIVE, AGAIN.」をスローガンとする企業広告キャンペーンを始めました。
1984年~1987年の企業スローガン「FUN TO DRIVE」に「AGAIN」を加えたもので、「日本人の気持ちをもう一度ドライブさせたい」、「もう一度、新しいクルマの楽しさを創造したい」という想いが込められました。

「ReBORN(再生)」というキーワードが銘打たれ、芸能人が歴史上の人物に扮して東北地方をドライブする企業CMがこのキャンペーンの一環として放送され、メディアを問わず消費者の大きな反響を呼びました。

トヨタがこのリブランディングで変えたかったものは、企業や自社商品のイメージではなく、企業と顧客の間に共通して漂っていた不安感や閉塞感でしょう。

まとめ

顧客とのつながりを深めた結果、ブランドは企業と顧客の共有財産になりつつある
ブランディングを行うことで、共感や信頼を通じて企業と顧客の間でイメージが共有され、顧客にとっての企業や商品の価値を高めることができます。

しかし、インターネットの発展で情報が溢れている今、市場や顧客の環境は移ろいやすく、それに合わせた対応が、企業や商品のブランドにも求められています。

市場や顧客の変化に合わせて、新規ブランドを立ち上げようにもコストやリソースがかかり、ブランドの浸透にも時間が必要となります。
そこで、既存のブランドへテコ入れすることで、その価値を高められる「リブランディング」が注目されているのです。

リブランディングでは、市場や顧客の変化に合わせてブランドの在り方を見直し、適切な形へと再構築していきます。一定の地盤を引き継いだまま、ブランドロゴや商品名、パッケージなどを変更することでイメージを一新することができるため、企業にとってハードルの低い取り組みとなっています。

ただし、ブランドがどんな状態にあっても、既存の顧客がいることを忘れてはいけません。既存の顧客にとってリブランディングは、これまで積み上げてきた共感や信頼を白紙に戻してしまう可能性があるのです。顧客とつながることを重視したマーケティングが主流の現在、ブランドは企業と顧客の共有財産となりつつあり、今後はブランドへの配慮がより強く求められていくのだと思います。