ペルソナ

自社のマーケティングにおいて、うまくペルソナ設定ができていると胸を張れるマーケティング担当者はそう多くないのではないでしょうか?

マーケティングの成功事例では、ペルソナ設定が明確であるケースがほとんどです。しかし、ペルソナ設定は意外と難しく、この分野ならこのペルソナ設定が正解だという決まりがないからこその難しさでもあります。

今回は、WEBサイトにおける「ペルソナ」設定の意味と大切さについて考えてみたいと思います。

ペルソナの設定はWEBサイトの方向性を定め、チーム内での共有に役立つ

まず、マーケティングにおけるペルソナとは、「企業が有する商品やサービスにとって、最も重要で象徴的な顧客像」のことを指します。WEBサイトで考えるならば、「WEBサイトのコンテンツにとって、最も重要で象徴的なユーザー像」ということになります。

そして、ペルソナ設定では、その架空の人物に対して、プロフィールや行動パターン、価値観やライフスタイルなど、詳細な設定を加えていきます。

よく「ペルソナ」と「ターゲット」は比較されたり、混同されたりすることがありますが、両者の明確な違いはこの部分にあります。ターゲットも顧客やユーザーを指す言葉ではありますが、ある程度のボリュームを見込んだ条件で縛った「群体」を意味する言葉なのです。例えば、「美容に興味を持つ20代の独身女性」はあくまでもターゲットであって、ペルソナではありません。そこから背景のストーリーを持つ、一人の生身の人間として設定できて初めて、ペルソナとなるのです。

では、なぜWEBサイトに「ペルソナ」の存在が必要となるのでしょうか?
ペルソナ設定の理由の一つに、ユーザー目線への立ちやすさというものがあります。WEBサイトにユーザーを集客するためには、ユーザーのニーズに正確に応えていく必要があります。ペルソナを設定することで、1日のどのタイミングでどのくらいの時間サイトに滞在するのか、どのような気分の時にサイトを訪れるのか、具体的な状況を想定することができます。それはコンテンツの方向性を決める際だけではなく、サイトデザインを決める意味でも大きな助けとなるのです。

そして、このようなペルソナの設定は、WEBサイトに関わる人間の中で共通認識を深めることにも役立ちます。ターゲットを設定する場合、それぞれの中でターゲットのイメージ像が異なるケースがあり、それがコンテンツやデザインのズレとして表れることがあります。しかし、ペルソナの場合は、その設定した架空の人物の趣味趣向までしっかりと共有できるため、そういったズレが起こりにくくなります。

定期的なペルソナの見直しも必須

ここからは、ペルソナを設定する際に注意するべきポイントについて見ていきましょう。

・できる限りペルソナを具体化する
先に述べた通り、ターゲットを設定することとは大きく異なる部分です。イメージを詰めていくためには、実在する人物と変わらない設定が必要となるのです。

年齢や性別、住んでいる場所といった基本情報に始まり、職業や生活パターン、性格や価値観、人間関係、収入、趣味趣向、インターネット使用状況、持っているデバイス、流行への感度など、細かく設定できればできるほど、架空の人物のバックボーンが浮かび上がり、ストーリーの説得力が増していきます。

・メインとサブでいくつかのペルソナを設定する
ペルソナ設定の大きな落とし穴となるのが、ペルソナは一人に集約すべきだという思い込みです。ペルソナの作りこみは確かに重要ですが、WEBサイトに集まるユーザーがすべて同じような人間であるとは限りません。ターゲットほどではないにせよ、ある程度の幅がなければ、WEBサイトのコンテンツがユーザーのニーズから外れてしまったことにさえ気づかなくなってしまうのです。

・ペルソナは成長させない
細部まで作ったペルソナですから、思い入れが生まれることもあります。WEBサイトの運営を続ける中で、担当者の知識や経験も増え、それに合わせてペルソナにも追加で設定を加えたくなるものですが、それは厳禁です。

WEBサイトはペルソナを元に最適化している以上、ペルソナに変更を加えてしまえば、たとえ僅かなものでもサイト全体に影響を及ぼしてしまうのです。そして、それはいつしかペルソナの行動を把握できなくしてしまいます。WEBサイトを運営していく上で、基準を失うことがあってはならないのです。

・作成したペルソナは定期的に見直す
これは、前述したペルソナを成長させないということにもつながっていきます。WEBサイトのユーザー層やそれを取り巻く環境には移り変わりがあります。場合によっては、同じペルソナを使い続けることでユーザーのニーズとの乖離が生まれる可能性もあります。

しかし、使用しているペルソナに直接変更を加えてしまうと、WEBサイトそのものの方向性がブレてしまいます。そうならないためには、現状にふさわしいペルソナになっているのか、定期的に見直す必要があります。適切でないと判断された場合は、ペルソナを再定義し、新しく作成することが重要です。

チームの共通認識が深まり、良質なコンテンツ作成につながる

WEBサイトにおけるペルソナ設定では、「富士通キッズサイト」が事例としてよく取り上げられます。富士通株式会社は、「未来を担う子どもたちに“技術の素晴らしさ”を伝えよう」をコンセプトに、「富士通キッズプロジェクト」の一環としてサイトを立ち上げました。しかし、プロジェクトメンバーの認識のズレから、サイト運営がうまく軌道に乗っておらず、チーム内におけるユーザー像を明確にし、共有するために、ペルソナ設定が行われました。

設定されたのは小学5年生の「佐藤美咲ちゃん」というペルソナです。どのようなことに興味を持ち、どのようにWEBサイトを使っているのか、小学生ユーザーの目線を大事にしたコンテンツを作成することで、成果を上げました。

それだけではありません。小学生というユーザーの環境を配慮して、小学校教諭である「松本先生」や美咲ちゃんの母親である「佐藤幸子さん」という複数のペルソナを設定することで、小学生にとってより適切なコンテンツの作成が可能になったことを明かしています。

他にも、アメリカのWEBマーケティング支援企業MODassicからは、ペルソナを活用したブログ記事を公開することで、多くのPVを集めることができたと報告されています。

クライアントに提出する画像の取り扱いに悩む「マーケティング担当のマリー」というペルソナを設定し、マリーが求める情報を詰め込んだ記事を作成、これをブログで公開したところ1日で600PVを獲得するようになったそうです。
このように、ペルソナ設定を有効活用できれば、コンテンツの質を高め、WEBサイトにユーザーを集客することができるのです。

まとめ

設定したペルソナを有効活用できるかどうかは、どれだけユーザーや運営に本気で向き合えるかにかかっている

ペルソナを設定することで、WEBサイトに携わる人間の中で共通認識を深め、サイト運営の方向性を定めることができます。それはコンテンツ作成にも影響を与え、有効活用することでより多くのユーザーを集めることにもつながります。ただし、ペルソナ設定には手間暇がかかります。詳細な設定はもちろんのこと、自社にとって都合のいいペルソナとならないように、事前にユーザーへのアンケートや現場へのヒアリングを行うことが重要です。

苦労して設定しても、そのうちペルソナを利用しなくなってしまうという話もよく聞きますが、それはペルソナがうまく設定できていない可能性が高いのです。架空の人物とはいえ、ペルソナもユーザーの一人、そのペルソナを利用しなくなるということは、ユーザーを意識した運営ができていないということに他なりません。

ペルソナ設定とその後の活用は、企業がどれだけ本気でWEBサイトの運営に取り組んでいるのかのリトマス試験紙になるのだと思います。