AIDMA(アイドマ)

マーケティングに携わっていると昔からよく耳にする言葉というのがいくつか存在します。「AIDMA(アイドマ)」もその一つです。消費者の心理的なプロセスとして使われている言葉ですが、実のところどういった意味を持つのかまでは理解せず、ただマーケティングのテンプレートとして利用している方もいるのではないでしょうか?

そこで、今回は、「AIDMA」がどのような意味を持ち、なぜ日本で普及しているのかについて考えてみたいと思います。

消費者に「購入」という行動を、実際に起こさせるのがAIDMAの法則のポイント

まず、「AIDMA」とは、1920年代にアメリカで提唱された「広告宣伝に対する消費者の心理的プロセス」を指す言葉です。1世紀近くも前のものではありますが、日本のマーケティングの現場では基本的な考え方として、今も利用されています。
新聞や雑誌、TVCMなど従来の広告は、このAIDMAの法則によって作成されているため、今の時代に合わせて消費者に対してどんなアプローチが必要になるかを考える上で、非常に重要な役割を果たします。

AIDMAは、

Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)

の5つのプロセスからなるもので、それぞれの頭文字をとって「AIDMA」と呼ばれています。

Attention(注意)

消費活動の最初のステップになる「商品を知る」ことを指すのが、この「Attention」です。
どんなに優れた商品であったとしても、消費者にその存在が知られていなければ売れません。そのため、消費者に商品を認知させるための活動を行います。「何の商品なのか」、大雑把なカテゴリー分けを消費者にさせるステップでもあります。

Interest(興味)

商品に注意を引いただけでは、消費者にすぐにそっぽを向かれてしまいます。そこから商品の中身に目を向けさせる必要があるのです。
そこで、このステップでは「商品が何に使えるか」を示すことが求められます。消費者に興味を持たせる一番の近道は、その商品が消費者にどのような利益を与えるのかをわかりやすく伝えることです。

Desire(欲求)

日本語では「欲求」という強い言葉で訳されているため、商品の購入に即つながりそうなイメージを持たれがちですが、ここでいう欲求は、商品のことを「ちょっといいな」と消費者が思う段階でしかないため、まだ消費者の行動にはつながりません。ですから、ここからどうやって購入につなげていくかが重要となります。従来のマーケティングで商品サンプルや試供品の提供が行われるのは、この潜在需要を顕在化させるためでもあります。

Memory(記憶)

「記憶」=「認知」と捉えられてしまうことがありますが、ここでの記憶はより行動に近い場所で思い出させることに意味があります。
特設売り場を設けてTVCMやCMソング、キャンペーンソングなどを流すのは、消費者に自社の商品のことを思い出させ、購入を促す効果があるため、現在でも様々な分野で同様のやり方が行われています。

Action(行動)

そして、最後に消費者に「購入」という行動を起こさせるステップが来ます。ここまでくれば消費者に向けて行う施策は必要ありませんが、消費者ができる限り多くの場所で手に入れることができる環境づくりが求められます。商品のことを思い出したものの売り場には置いてない、もしくは品切れで購入できないという状況になってはこれまでのプロセスが無駄になってしまいます。

消費者の心理を購入に向かわせて終わりではなく、実際に購入させるという「行動」で終わることがAIDMAの法則の最も大きなポイントとなります。

消費行動テンプレートは、消費者を中心に考えられたものなので、地域や時代によって変わる

実は、AIDMAの法則が提唱されたアメリカでは、「AIDA(アイーダ)の法則」というものが同時期に提唱されており、今もマーケティングの現場で使われています。

AIDAとは、

Attention(興味)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Action(行動)

の4つのプロセスからなるもので、「欲求」が「行動」にすぐつながるのが大きなポイントです。
では、なぜ日本では「AIDA」ではなく、「AIDMA」が定着したのでしょうか?
その違いは国民性にあると思われます。

日本では、何かを購入する際に他の商品との比較検討を行う傾向があり、商品の単価が高くなればなるほど、この傾向は強くなります。
そのため、「欲求」から直接「行動」へとつなげる「AIDA」よりも、「記憶」を間に挟むことで消費者の比較検討期間を乗り切れる「AIDMA」の方が、日本におけるマーケティングによりフィットしたのだと考えられます。

消費者の心理プロセスは国民性や地域性はもちろんのこと、時代によっても移り変わります。ですから、消費者に合わせた心理プロセスをマーケティングに取り込むことが重要となります。

ここでは、AIDMAやAIDAの法則以外の消費行動フレームワークを紹介しておきます。
インターネットの発展により、消費者は商品に対してより多くの情報収集が可能となりました。そんな状況に合わせて登場したのが、「AISAS」と「AISCEAS」です。

AISAS

「AISAS」とは、1990年代に電通株式会社により提唱された概念です。

Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)

インターネットによる「検索」と「共有」が新たに加えられた心理プロセスになっています。
これまでは消費者ごとに完結していた消費行動が、検索と共有によって第三者に影響を及ぼすのがポイントです。企業は商品を売って終わりではなく、消費者の満足度に気を配る必要が出てきたことを示しています。

AISCEAS

「AISCEAS」も同様にネットに注目した消費行動テンプレートで、2000年代に有限会社アンヴィコミュニケーションズにより提唱されました。

Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Comparison(比較)→Examination(検討)→Action(行動)→Share(共有)

基本的な流れはAISASと同じですが、消費者による「比較」「検討」が行われることを明確に示しています。単価が高額であったり、商品に知識が必要となったりするケースを想定しており、より現在の状況に合わせたテンプレートになっています。

そして、現在のマーケティングで外すことができないのがSNSの存在です。
その流れを受け、電通株式会社は2010年代にSNS普及に対応した消費行動テンプレート「SIPS」を提唱し始めました。

SIPS

Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share & Spread(共有・拡散)

「共感」という消費者の感情の動きからスタートしているのが特徴です。その他のステップでも消費者の行動がメインとなっており、マーケティングが企業主導から消費者主導のものへと変わったことを感じさせるテンプレートになっています。
消費行動の最終目的が「購入」という行動から、「情報」の共有に切り替わっていることも注目です。これはマーケティングだけではなく、企業や商品のブランディングにもつながる消費行動になっているのだと見られます。

最後に、現在のマーケティングで重要視されているコンテンツマーケティングの概念を取り入れた消費行動テンプレート「DECAX」を紹介しておきます。

DECAX

「DECAX」も電通株式会社が2010年代に提唱した消費行動テンプレートとなります。

Discovery(発見)→Engage(関係)→Check(確認)→Action(行動)→eXperience(体験と共有)

企業の展開するコンテンツに合わせた消費行動で、SIPSと近い流れになっています。大きく異なるのは、「購入」という「行動」が含まれている点にあります。マーケティングが消費者主導になったことで、企業に必要になったのは消費者への広告宣伝ではなく、購入への動機付けになったことがわかるテンプレートになっています。

まとめ

マーケティングの主導権が消費者に移りつつあるため、それに合わせた売り方を柔軟に考えられるかが鍵

AIDMAはマーケティングを考える上で基本となる消費行動ではありますが、現在の消費活動にそのまま当てはめるには難しい部分があるのも事実です。インターネットの発展により、消費者の環境は大きく変わりました。商品の情報収集を事前に行うようになり、自分にとってその商品がどんな利益を生むのか比較検討できるようになったため、ただ商品を売り込むだけでは消費者を動かすことができなくなっているのです。

マーケティングの主導権は企業から消費者へと移っており、消費行動テンプレートも状況に合わせたものを利用するのがよいでしょう。
消費者の消費行動に合わせて、商品の売り方を柔軟に考えられる企業が、今後の競争を勝ち抜いていくのだと思います。