近年、集患のためにWebサイトを活用する医療機関が増えています。しかし、その中でWebサイトを起因とする消費者トラブルの発生が増えていることもあり、厚生労働省が2018年6月に医療広告に規制をかける運びとなりました。

弊社グループ企業も、出版社として医療・健康に関する書籍を多数手がけてきましたが、その際には、医療広告ガイドラインの元、表現などに細心の注意を払い、取り組んできました。今回は、これまでの経験を活かした出版社としての目線から、今後医療広告ガイドラインとどう向き合うべきなのかをお伝えしたいと思います。

■関連ブログ
事例で学ぶ 医師や病院・クリニックが取り組むべき「医療広告」とは?

医療機関のWebサイトの情報がすべて「広告」として扱われる

まず、知っておかなければいけないのが、2018年6月に施行された改正医療法により、医療広告のガイドラインが大きく変わったという点です。

●医療に関する広告規制の見直し

厚生労働省
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_1.pdf

最も大きな変更点は、これまで医療法上の広告規制では対象外とされていたWebサイトが、今回より広告規制の対象として見直されたことです。これにより、医療機関のホームページ上の情報はすべて「広告」として扱われることとなり、広告ガイドラインに触れていないか、監視される対象となりました。具体的に禁止されているのは、比較広告・誇大広告・虚偽広告・公序良俗に反する内容の広告です。
ここで重要なのは、医療機関のWebサイト上への情報の掲載自体が禁止されたわけではないということ。あくまでその情報が「広告」として扱われるだけだということを正しく理解しておく必要があります。

つまり、新たな医療広告ガイドライン(以下、新ガイドライン)に沿った内容の情報は、堂々とWebサイトでも発信できる、「お墨付き」を得たということです。

「体験談」や「術前または術後の写真」の取り扱いが厳しく規制されることに

さて、今回の新ガイドラインでは、特に2つの情報の取り扱いに関して厳しく言及されています。患者の「体験談」と「術前または術後の写真」の取り扱いについてです。

まず、「体験談」に関してですが、「患者の主観または伝聞に基づく治療の内容または効果に関する体験談の広告をしてはならない」という理由により、禁止されることになりました。

●広告禁止事項の規定について「体験談」
厚生労働省
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_1.pdf

治療内容やその効果に対して、客観的事実として証明できないこと、体験談の影響で適切な医療の選択が阻害される可能性があることなどが理由として挙げられています。

そのため、今後は患者の体験談に代わるコンテンツが必要となります。

代わるものとして考えられるのは、治療に関する具体的な情報をわかりやすく提示する方法です。具体的な治療方法の解説や、どのくらいの期間でどのような治療を何例行ったのかという治療実績を示すことで、今後は患者の信頼を獲得していかなければいけません。専門的な情報を患者にもわかりやすく伝えるためには、見せ方にもこだわる必要があります。

次に、「術前または術後の写真」取り扱いに関してですが、こちらは一律で掲載が禁止されたわけではありません。以下が新ガイドラインです。

●広告禁止事項の規定について「術前または術後の写真①」
厚生労働省
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_1.pdf

●広告禁止事項の規定について「術前または術後の写真②」
厚生労働省
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_1.pdf

Webサイト上で、患者を誤認させるような写真の使い方が禁止されることになりました。具体的な治療内容や副作用、リスクなどに関する詳細な説明がある場合は、これまで通り「術前または術後の写真」をWebサイトに掲載することができます。
これにより、患者へのインパクトだけを狙ったお手軽な医療機関のWebサイトは淘汰されることになるでしょう。写真はあくまでも治療の解説をわかりやすく伝えるための補助的なものだと考えることができるならば、特に心配する必要はありません。

ネットパトロールによる監視が強化、対応できなければ淘汰への一途を辿る

他にも、「日本が誇る50の病院」や「最新の○○療法」、「○○治療最前線」といった、客観的な事実として認められない、患者の耳目を集めるためだけでの煽り文句は禁止されることになりました。医療機関のWebサイトが「広告」として扱われる以上、裏付けの取れない内容はすべて禁止されることになります。

一方で、自由診療に使用される国内未承認の医薬品や医療機器に関しては、対象の医薬品や医療機器が未承認であること、その入手経路、それに代わる国内で承認された医薬品や医療機器の有無、諸外国における安全性などに係わる情報を明示することで、広告することができます。病院は、患者のためにどれだけ誠実に情報を開示できるのかが今後問われていくことになるのでしょう。また、規制の強化に伴い、監視体制も強化されることになりました。

●医療などに係わるWEBサイトの監視体制強化
厚生労働省
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_1.pdf

厚生労働省は、Webサイトを監視するためのネットパトロールにも力を入れており、そのための予算も増額されています。自治体とも連携し、広く情報提供を呼びかけ、トラブルに関する相談や報告を受けていくので、甘い考えや新ガイドラインへの対応の遅れは命取りとなります。特に、消費者トラブルの多い自由診療を提供する医療機関などのWebサイトの適正化を目指すものなので、この新ガイドラインに適応できない医療機関は次々と淘汰されていくことでしょう。

医師が手間ひまをかけて積極的に関わったWebサイト・コンテンツが今後は必須

では、今後、医療機関のWebサイトに求められることは一体何でしょうか?

求められるのは医師が積極的にWebサイトへ関与していくことです。
この新ガイドラインにより、Webには医師が手間ひまをかけた良質なコンテンツが残り、症例写真や体験談、突飛な煽り文句など、患者へのインパクトを重視したお手軽な医療系コンテンツは廃れていくことになるでしょう。

これからは、初心に立ち返り、コンテンツの内容勝負の時代がやってきます。医療という専門的な分野である以上、知識や見聞において医師に勝る存在はありません。医師が直接正しい情報を発信していくことが重要なのです。

良質なコンテンツ作成のために割く時間は、患者との信頼関係を築くために割く時間と同じ。新ガイドラインの元では、安易な発想で誰かに丸投げしてWebサイトを運営したところで集患にはつながりません。今後、病院が生き残っていくためには、新ガイドラインの元、医師が積極的に関わったWebサイト・Webコンテンツが確実に求められていきます。


↓患者が医療機関を選ぶ際に意識していること(幻冬舎ウェブマオリジナル調査レポート)