高齢化社会が進む日本において、「白内障」は、歳を重ねるにつれ、発症率が高くなる身近な眼疾患です。病気としての知名度も高く、どんな病気なのかを知っている人も多いでしょう。しかし、「当たり前」になっているからこそ、見落としがちな面があるとも言えます。今回は「白内障」に関する調査データを見ることで、その「当たり前」の裏に何が隠れているのか考えてみたいと思います。

■関連ブログ
対話をしているつもりの医師、対話を求める患者 これからの医師に求められるコミュニケーションとは

白内障に関する先進医療はほぼ知られていない

まず、一般財団法人白内障研究所が2014年に行った「白内障に関する意識調査アンケート調査結果」というデータがあります。全国の40歳から79歳までの男女にアンケートしたものです。

<白内障では目の中のどこが濁るか、正しいのは次のどれでしょうか?>

白内障では目の中のどこが濁るのかという問いに対して、64%の人が正解である「水晶体(レンズ)」を選びました。やはり歳を取ると避けられない病気である白内障への興味が高いのか、過半数以上の人が白内障の原因を正しく理解していました。

次の問いはこちらです。

<白内障の手術には眼内レンズが使われることを知っていますか?>

「手術を受けたから知っている」が3%、「手術を受けてないが知っている」が41%と、知っている層が合計で44%となりました。先ほどの問いと比べると20%少ない結果となりました。病気の原因は知っていてもその治療法までは知らないという結果になったのは、白内障が手術をすれば治る病気だというイメージが強いからかもしれません。医師に任せれば大丈夫だという安心感が、自発的に病気を「知る」意欲を削ぐことになっているようです。

最後に、先進医療について質問しています。

<先進医療では、白内障と老眼が同時に治せる眼内レンズがあることを知っていますか?>

この質問では、「知っている」が10%、「レンズは知っているが先進医療のことは知らない」が14%で合計24%、レンズのことを知っている層はわずか1/4まで減る結果となりました。白内障のことを知っていても、初歩的な知識で止まってしまい、専門的な知識までは手に入れようとしない層が多いようです。

先進医療も含めて、眼内レンズなどの白内障の具体的な治療方法に関しては、
医師や医療機関による啓蒙活動がまだまだ必要
だとわかる結果になりました。

退院後の日常生活に不安を持つ患者へのアフターケアが今後の課題に

次に、滋賀県の公立甲賀病院が2015年に行った「白内障手術を受けた患者の療養生活についての実態調査」について見ていきたいと思います。
こちらは先ほどと違って白内障の手術を実際に受けた38名の患者への質問となります。

<日常生活への不安はあるか>

日常生活の不安については「いいえ」が53%で、「はい」の47%を上回りましたが、ほぼ半々という結果になりました。不安の内容の中心は「してもいいのかどうか」の判断がつかないというものが多く、実際に手術をするまで患者の方では術後の日常をうまくイメージできていなかったことがわかります。

次は、医師や医療機関から実際に受けた説明への評価となります。

<目薬の説明や退院後の生活への注意点の説明に満足しているか>
<その際に受けたかった説明はあったか>

目薬の説明や退院後の生活の注意点の説明には87%が「はい」と答え、患者の高い満足度があることがわかります。その際に受けたかった説明でも68%が「いいえ」と答え、特に不満はないという結果になりました。診察中の医師や医療機関の説明には十分納得しているということでしょう。

しかし、受けたかった説明があったと答えた32%の人に、続いて質問すると以下のような結果になりました。

<受けたかった説明を受けていたら不安や負担は軽減したか>

もし説明を受けていれば不安や負担が軽減したと考える患者が83%いることがわかりました。受けたかった説明の内容を見てみると、「退院後の生活での許容範囲を具体的に知りたい」、「洗顔、洗髪がいつからOKなのか。乳液とか化粧などは」、「買い物に行っても大丈夫か」など、最初に質問した日常生活の不安と共通する内容が多いことがわかります。
患者としては白内障の治療自体には満足しているが、その後のアフターケアに関しては、まだまだ不安が残るといったところでしょうか。
医師や医療機関が診察中にできることは限られています。今後は、診察以外の場で患者をケアする方法が求められることになると推測されます。

まとめ ―眼科医は白内障に関する術前術後の総合的な情報発信が必要―

白内障に関する調査データを2種類見てきましたが、実はその両方のデータに共通することがあります。それは、白内障という病気が身近なものになったことで、多くの人がその初歩的な知識を手にすることになりました。しかし、その一方で、最低限の知識で満足し、そこで白内障に関して「知る」ことを止めてしまう層が一定数いるということです。

最初のデータでは、白内障の原因は知っているものの、その治療法である眼内レンズに関して知っている層は専門的な知識になるにつれて減る一方でした。

次のデータでは、実際に白内障の手術を受けた患者でも、事前に術後の日常生活についてうまく情報を集められていなかったことがわかります。これは白内障が手術で治る病気だという安心感と、白内障を治してくれる医師や医療機関への信頼感の高さによるところが大きいように思えます。

今後も高齢化社会がさらに進み、白内障患者の増加が予測される中、診察中にすべての患者の要望に応えることは難しく、術後の十分なケアまでは手が回らないというケースは増えるでしょう。

しかし、この現状を指をくわえて見ている訳にもいきません。総合的なケアという意味では、まだまだできることがあるように思います。眼科医や医療機関は、診察の場を超えて、白内障やその治療法に関する知識や説明だけでなく、術前術後の日常生活のケアまで踏まえた情報を広く発信していくことが求められます。


↓患者が医療機関を選ぶ際に意識していること(幻冬舎ウェブマオリジナル調査レポート)