近年、インターネットの発展や、スマートフォン・タブレット端末の台頭により、健康や医療に関する情報を自発的に調べる人が増えています。一方で、Web上に溢れる情報の正確性に疑問を持っている人も多いと聞きます。今回は、「健康・医療に関する意識調査」(2017年 MSD株式会社調べ)のデータを元に、今後、医師や医療機関がWeb上に溢れる健康や医療に関する情報とどう向き合っていくべきなのか考えてみたいと思います。

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情報源はほぼWebだが、患者は情報の信憑性に不安をもっている

まず、健康や医療に関する知識をどの程度持っているかについて調べたデータがあります。

<健康・医療に関する知識(単一回答、n=3,000)>

全体の数字では、「健康や医療に関する一般的な知識は持っていると思う」が43.6%で一番多い回答となりました。

しかし、これを年代別で見ていくと、20代~40代では「健康や医療についてあまり知識はないが、なるべく知るように努力している」がまだ勝っており、50代、60代、70代以上と、年齢が上がるに連れて、健康や医療に対する関心が高まっていることがわかります。
これは、年を取るほど病気がより身近な問題になってくるためでしょう

次に、その情報源ですが、以下のような結果になりました。

<健康や医療に関する知識の情報源(複数回答、n=3,000)>

「検索サイト」が77.5%と圧倒的な回答率を見せています。次点の「医師等の専門家に聞く」が30.2%、3位の「家族や友人・知人」が25.6%と、検索サイトの数字の半分にも満たないところを見ると、より手軽な情報収集が好まれる傾向にあるとわかります。

では、逆に不便な点はどうでしょうか?

<情報収集時の不便な点(複数回答、n=2,420)>

※健康や医療の情報収集にインターネットをよく利用している人からの回答

「書いてある情報が正しいかどうかわからない」が49.3%でトップとなっています。また、「どれを参考にすればいいのかわからない」が37.3%と2番目に多い回答になっていることからもわかるように、健康や医療に関する情報には専門的な知識が必要とされるため、信じてもいいのか少し判断に迷うところがあるようです。

続いて、どのような時に健康や医療の情報をインターネットで収集しているかの調査データです。

<情報収集をするシチュエーション(複数回答、n=2,420)>

※健康や医療の情報収集にインターネットをよく利用している人からの回答

「体の変化や不調がある時」が58.8%、「特定の病気や症状について詳しく知りたい時」が57.8%と過半数を超える回答になりました。「一時的な対処法や応急処置について知りたい時」が41.6%で3位につけていることから、病気や症状に悩む現状を受けてから情報を調べ始めるという流れが一般的なようです。

普段から健康や医療の情報に意識して触れている人は思った以上に少ないのかもしれません。

Web上にある健康や医療に関する情報には懐疑的な目が向けられている

<情報の出典の確認状況(単一回答、n=2,420)>

※健康や医療の情報収集にインターネットをよく利用している人からの回答

病気にかかってから情報を集め始める傾向があるのが、先ほどのデータからわかりましたが、情報収集をする際に情報の出典の確認をしているのかどうかのデータが上記のものとなります。

「確認する場合が多い」が44.1%で最も多くの回答を集めました。年代別に見ても、すべての年代で「確認する場合が多い」がトップとなっています。やはり対処法や治療法に本当に効果があるのかは気になるようです。

ちなみに、30代で「確認する場合が多い」が他の世代と比べて低く、その代わりに「常に確認する」が15.7%と伸びているのは、まだ小さな子どもを持つ家庭が多いためだと推測されます。子どもの身に何かあっては、という思いから、情報の出典を確認することが当たり前となっている家庭も多いのでしょう。

さて、インターネットの情報が本当かどうか気にする傾向があるのはわかしましたが、その情報を信じてしまったために、ネガティブな経験をしたことがある人はどのくらいいるのでしょうか?

<ネット情報によるネガティブな経験(複数回答、n=2,420)>

※健康や医療の情報収集にインターネットをよく利用している人からの回答

「ネガティブな経験をしたことはない」が81.9%と、8割を超える回答でトップになりました。やはりネットの情報に関しては、その真偽について高い警戒心を抱いていることがこのデータからわかります。

しかし、13.9%とはいえ「自分や家族がひどく不安をあおられた」と回答した層がいることから、誤った情報の拡散が病気に悩む人々を苦しめている現実があるようです。

では、実際にどの程度Webサイトの情報に信頼を置いているのか調べたデータがこちらになります。

<Webサイトの信頼性(単一回答、n=3,000)>

「どちらともいえない」が66.0%で過半数を超えて一番多い回答となりました。信頼に足るのか判断に困るというのが正直なところなのでしょう。しかし、その一方で「とても信頼できる」はわずか0.8%しかなく、年代別に見ても2%さえ超えることがないと、信頼性に関しては厳しい結果が出ました。

では、信頼できないと考える理由について見てみましょう。

<Webサイトが信頼できない理由(複数回答、n=235)>

※Webサイトの情報を信頼できないと評価した人からの回答

「情報の出所が不明なところがあるから」「正確性を欠いた記事や情報が多そうだから」「きちんとしたデータの裏付けを取っていない記事が多そうだから」が、それぞれ46.8%、46.4%、43.0%と高い支持を集めました。

信頼できないと評価した人からの回答のため、厳しい回答になるのは仕方ありませんが、先の調査で「どちらともいえない」と回答した人でも同じような傾向になるのではないかと推測されます。

<Webサイトの信頼性の変化と現在のWebの信頼性(単一回答、n=3,000)>

「変わらない」が76.6%で圧倒的に多い回答です。「信頼できるようになった」は16.0%しかなく、「とても信頼できるようになった」と合計しても2割に届きません。年代別に見ても、ほぼ同じような回答傾向となりました。

これはWebサイトが信頼性を維持しているというよりは、信頼を獲得できていないと見る方が正しいでしょう。

<Webサイトの信頼性低下の理由(自由回答、n=205、単位:%)>

※信頼性が低下したと感じた人からの回答

信頼性低下の理由では、フェイクニュース関連の回答をした人が多いようです。
DeNAのキュレーションサイトの影響は大きく、他のメディアの情報に関しても厳しい目が向けられる要因になっています。

Webサイトの信頼性についてもう少し踏み込んでみましょう。

<Webサイト別閲覧率とそのサイトを信頼する対象者割合(複数回答)>

健康や医療について調べる際に、最も利用されているのは「Yahoo知恵袋、教えてgoo等のQ&A口コミサイト」で42.1%となりました。しかし、信頼できる上位3つのサイトに選んだ人は43.3%と今一つ伸びません。

ここで注目したいのは、「厚労省や国立がん研究センター等公的機関が提供しているサイト」を信頼できると挙げた人が90.0%と高い数字を見せていることです。これまでの調査結果からもわかる通り、情報の信頼性を重視する人が多いため、裏付けの取れた情報に関しては、Web上でも大きな信頼が寄せられるということがわかります。

他にも、医療機関や研究機関、製薬会社が関わる情報は信頼できると判断されているようです。

病気の治療は医師に任せるが、Webの情報に頼るという姿勢が明確に

最後に、これらの情報が実際の治療現場にどのような影響を与えているのか調べたデータがあります。

<病気の治療方針の決定方法(単一回答、n=3,000)>

「担当の医師に相談して決めている」が51.5%と過半数を超える回答となりました。「全て担当の医師の判断に任せている」も27.1%と高い数字になっています。

年代別に見ても、それぞれ約1/4の人たちが「全て担当の医師の判断に任せている」と答えています。

では、その理由を見てみましょう。

<医師の判断に任せる理由(複数回答、n=813)>

※全て担当の医師の判断に任せている人からの回答

「自分には医学知識がないから」が55.8%と一番多い回答です。知識がないから口も出さないという少し消極的な姿勢が見える回答となりました。「治療方針は医師に任せるものだと思っているから」が38.0%で次点に入ることからも、その姿勢がわかります。

しかし、医師に信頼を寄せても、病気に関して不明な点が出てくることはあります。そのような時にどのような行動を取っているのかが次のデータになります。

<医師の説明がわからなかった時の対処(複数回答、n=3,000)>

「同じ医師に質問する」が56.7%でトップなのですが、「インターネットで調べる」が55.4%とほぼ変わらない回答を集めています。

医師に信頼を寄せ、治療を任せる一方で、不明な点があればWebの情報に頼ってしまうという行動に出る人が多いようです。

誤った情報による患者の思い込みや自己判断は治療の妨げになります。今後は、医師や医療機関の側でもWebでの情報発信対策が必要となってくるのでしょう。

<医療情報サイトの信頼性を⾼める要素(複数回答、n=3,000>

やはり、主観的な内容ではなく、客観的に正しい根拠にもとづいた情報がわかりやすくまとまっていることを重要視しているようです。出典元を明らかにし、患者が本当に求めていることに忠実に従って情報発信をしているWebサイトが今後求められていくでしょう。

まとめ ―Webの「手軽さ」への対策が今後の医師や医療機関には求められる―

以上が、健康や医療に関する意識調査となります。Web上の情報に懐疑的な目を向けつつも、その手軽さに負け、つい頼ってしまうという人が多いようです。それも、事前に病気についての基礎知識を調べるというよりは、病気の症状が出始めてから調べるため、一歩間違えば病気を悪化させる恐れがあります。「手軽さ」にはそれほどの魅力があるということでしょう。

今後、医師や医療機関には、「手軽さ」と「信頼」の両立、もしくは「手軽さ」を遥かに超える「信頼」が求められることになるのでしょう。患者の信頼にWeb上で応える必要がある時代に突入していることは間違いありません。


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