近年の医療や健康への意識の高まりや、患者視点を重視した医療の広まりにより、これまで以上に医師と患者の間でコミュニケーションが求められるようになっています。診察における情報の提供や満足度、両者の信頼関係など課題も多く見られるようになってきました。
今回は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社と京都大学大学院 吉田純研究室が共同で行った「医師と患者のコミュニケーションに関する調査」のデータを参考にして、今後の医療現場に何が求められていくのかを考えてみたいと思います。

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健康と医療に高い関心はあるものの、知識がなく不安に思う患者が3割強

まず、ここ数年内に医療機関で診察を受けた経験のある患者に健康と医療に関する「関わり」について尋ねたデータがあります。

<自身の健康と医療の関わりについて>

「自分の健康は自分で管理したい」「自分の治療には積極的に関わりたい」「病気や薬の情報を積極的に集めたい」の3項目では「非常にそう思う/かなりそう思う」というポジティブな回答がそれぞれ63.2%、61.6%、51.2%と過半数を超える結果になったことに対して、知識に関する4項目では「非常にそう思う/かなりそう思う」を合計しても30%に満たないという数字になりました。

積極的な気持ちを持つ患者が多い一方で、やはり健康や医療に関する知識に高い壁を感じている患者がほとんどだとわかる結果です。

医師に物足りなさを感じる患者

では、実際に医師から患者への病気や治療方法の情報提供に関して、医師と患者の双方がどのように考えているのか、調査データを見ていきましょう。

<患者に病気の情報を十分に提供している(医師)>

<医師から病気の情報を十分に提供されている(患者)>

「非常にそう思う/かなりそう思う」というポジティブな回答が、医師側では43.2%あるのに対し、患者側では33.1%しかありません。「あまりそう思わない」というネガティブな回答が患者側に多いことからも、医師からの情報提供に患者側が若干の不信感を抱いていることが見て取れます。

<最も望ましいと考える治療方法の情報を十分に提供している(医師)>

<治療方法の情報を医師から十分に提供されている(患者)>

治療方法の情報の提供に関しても、「非常にそう思う/かなりそう思う」というポジティブな回答が、医師と患者でそれぞれ52.0%と34.7%と大きな開きがあることがわかります。

<治療方法の選択肢の情報を十分に提供している(医師)>

<治療方法の選択肢の情報を十分に提供されている(患者)>

こちらの回答でも、「非常にそう思う/かなりそう思う」というポジティブなものは医師と患者でそれぞれ45.2%と29.8%と開きがあります。

医師が考えている以上に患者が情報を提供されていないと感じていることがデータからわかりました。

しかし、「非常にそう思う」という最もポジティブな回答だけを見比べてみると、医師と患者の双方にほとんど開きがありません。これは患者側に十分な知識の下地を持つ層が一定数いるからだと推測されます。このままでは患者の中で情報格差が広がっていく可能性もあるので、医師の側でもその差を埋める取り組みが必要になってくるのだと思われます。

診察時間に関して興味深いデータがあります。

<診察時間は十分に設けてある(医師)>

<診察時間は十分に設けられている(患者)>

「非常にそう思う/かなりそう思う」というポジティブな回答が、ここでも医師と患者でそれぞれ43.3%と25.0%と開きがあることがわかります。

どうやら患者側では、診察時間が短いために医師からの情報の提供が十分ではないと考えられているようです。

主導権は医師にあり、「対話」がうまくできていないと考える患者が多い

さて、診察時間を短いと考えている患者が多く存在する可能性が浮かび上がりましたが、診察内容自体を患者がどう捉えているのか、さらに調査データを見ていくことにしましょう。まずは、医師と患者の「対話」に関するものです。

<十分な対話ができている(医師)>

<十分な対話ができている(患者)>

「非常にそう思う/かなりそう思う」のポジティブな回答にやはり開きがあります。医師と患者でそれぞれ56.7%と34.8%となりました。特筆すべきは、「かなりそう思う」という回答が、医師が44.2%あるのに対し、患者は23.6%とほぼ倍の開きがある点です。ポジティブな回答を選びつつも、心のどこかで医師との対話が足りていないと感じている患者が多いのかもしれません。

<説明と同意(インフォームド・コンセント)を十分に実施している(医師)>

<医師の説明に納得し、治療を受けている(患者)>

「かなりそう思う」だけで53.8%と、インフォームド・コンセントに対する医師側の意識の高さが見て取れます。しかしながら、患者側では「非常にそう思う/かなりそう思う」を合計しても39.7%と40%にも満たない結果が出ました。

これはおそらく、納得ができていないというよりは、「十分な理解」が進んでいないことに起因するのではないかと考えられます。

<治療方法の選択を十分に実施(医師)>

<医師と相談しながら治療方法を選択している(患者)>

治療方法の選択にも大きな開きがあります。患者の「ややそう思う」が41.9%と高い数値を示しているのは、治療法の主導権は医師にあると感じている患者が多いためでしょう。

患者の信頼感や満足感は医師の想定よりも低く、厳しい結果に

最後に、医師と患者の関係について、もう少し踏み込んだ調査データを見ていきましょう。

<患者が質問しやすい雰囲気を心がけている(医師)>

<医師は質問しやすい雰囲気を心がけている(患者)>

医師の気持ちは患者に伝わっていないようです。「非常にそう思う」という最もポジティブな回答でも医師と患者でそれぞれ14.4%と9.0%と大きな隔たりが出てしまいました。

何を質問すればいいのかわからないと考える患者も一定数いることも考えられますが、やはりこれまでの回答からもわかる通り、患者側は情報の提供や対話が足りていないと考えているため、医師との間に壁を感じているのではないかと推測されます。

<患者とは信頼関係が築けている(医師)>

<医師とは信頼関係が築けている(患者)>

医師と患者の信頼関係については、双方とも消極的な回答が多いようです。特に、医師の「ややそう思う」が回答の中で最も多い51.0%という数値を示す通り、医師も患者も信頼関係の構築に苦しんでいることがわかります。

<患者は診察に十分に満足している(医師)>

<医師の診察に満足している(患者)>

医師も患者も「ややそう思う」が一番多い回答となりました。興味深いのは、医師の「非常にそう思う」が3.8%と極端に低い数値となっていることです。診察時間は現状で十分だと考える医師が多い中、診察内容では患者を満足させられていないと心に葛藤を抱える医師が多いようです。

比較的医師に対して厳しい数字が並びましたが、医師も患者も現状に改善すべき点があると考えているのは共通しているようです。

まとめ ―患者との信頼関係を築くために、診察の場以外で正しい情報を発信していくことが必要―

以上が、医師と患者に関するコミュニケーションの調査結果です。「診察・治療中に患者への対応で困っていること」を医師に別途でアンケートを取ったところ、患者との「知識差」や患者が持つ「間違った情報からの思い込みや自己判断」に悩む医師も多いようです。

しかし、決められた診察時間の中で患者の疑問を解消し、正確な情報を提供していくことは容易いことではありません。医師と患者の信頼関係を築いていくために、診察とは別の相談窓口を設けることも一つの手ではないかと考えられます。

インターネットで患者が自発的に、そして容易に情報を集められるようになった今、患者の情報格差を無くし、誤った情報からの思い込みや自己判断を防ぐ意味でも、医師や医療機関が病気に関するQ&Aや病気の啓発といった、正しい情報を発信していく取り組みが必要になってくるのだと思います。


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