「がん」は日本ではもはや国民病と呼ばれ、1981年以来日本人の死亡原因のトップとなっています。がんやその治療方法に関する情報は「国民的関心事」といっても差支えがないでしょう。しかし、がんという病気の性質上、患者やその家族を無闇に不安にさせないために、積極的な情報の開示が抑えられる傾向にあるのもまた事実です。
今回は、がん情報サイト「オンコロ」が2018年に行った「がん患者の情報収集に関するアンケート調査 オンコロリサーチVol.8」のデータを元に、今後医師や医療機関が「がん」に関する情報をどのように扱っていくべきなのかを考えてみたいと思います。

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5大がんと5大がん以外の患者で情報の入手や共有に大きな開きがあることが鮮明に

この調査データでは、年間羅患数の多い部位のがん種(胃、大腸、肺、乳房、前立腺)を5大がんと定義し、それ以外のがんとの比較や、ステージ1~3の患者とステージ4の患者でがん情報へのアクセスに違いがあるのかを調べたデータになっています。
まず、がん患者に対して、自身のがんに関する情報について尋ねたデータがあります。

<治療前の医師の説明は十分だったと思いますか?>

全体で見ると、「とてもそう思う」が576名中134名で23.3%、「そう思う」が260名で45.1%となりました。ポジティブな反応を合計すると68.4%となり、約7割の患者が治療前の医師の説明に満足していたことがわかります。

5大がんと5大がん以外、ステージ1~3の患者でも、全体と同じような回答傾向となりました。しかし、ステージ4の患者の回答を見ると、「そう思わない」が154名中20名で13.0%、「全くそう思わない」が9名で5.8%、合計すると18.8%と2割弱の患者がネガティブな反応を示すことになりました。

これはステージ4という病状が大きく影響していると推測されます。がんの告知や病状の説明、今後の治療など、医師や医療機関の側でも慎重を要する情報となるため、すべてを一気に説明するのではなく、段階的に説明することを選ぶ傾向にあるためだと思われます。

次に、自身のがん情報が入手しやすいかどうかについて質問したデータがあります。

<自身のがん情報は他のがん種に比べ、入手しやすいと思いますか?>

全体の回答を見ると、「とてもそう思う」が99名で17.2%、「そう思う」が240名で41.7%となり、合計で58.9%の患者ががんの情報を入手しやすいと思っている結果となりました。

特筆すべきは、5大がんと5大がん以外の患者のそれぞれの回答比率の開きです。

5大がんの患者の「とてもそう思う」は349名中78名で22.3%、「そう思う」が192名で55.0%、合計すると77.3%とポジティブな回答が全体の回答も大きく上回る結果となりました。

それに対して、5大以外のがんの患者は「そう思わない」が226名中66名で29.2%、「全くそう思わない」が26名で11.5%、合計すると40.7%でネガティブな反応が大多数を占めるデータになりました。

これにより、現状では部位によるがん種によって、患者の中で大きな情報格差が生まれていることがわかります。羅患数の観点から見れば、仕方のないことなのかもしれませんが、患者やその家族の立場に立って考えると、納得のいくものではありません。5大がん以外の分野で、今後どのように啓蒙活動を進めていくべきか課題が残る結果となりました。

ちなみに、ステージ1~3とステージ4の患者の回答では、大きな回答の差は見られず、全体の回答と近い傾向となりました。

情報の入手しやすさについては格差の出る結果となりましたが、実体験を元にした情報交換ができる場でもある、患者同士の交流について調べたデータがあります。

<自身のがん種は患者同士の交流が活発だと思いますか?>

「どちらともいえない」がすべての回答で大きく目立つ結果になりました。
全体では「とてもそう思う/そう思う」のポジティブな反応が576名中203名で35.2%、「そう思わない/全くそう思わない」のネガティブな回答が160名で27.8%となりました。

先ほどのがん情報の入手のしやすさでは、8割弱がポジティブな回答を見せていた5大がんの患者でも、「とてもそう思う/そう思う」が349名中162名と46.4%の回答に止まりました。

一方、5大がん以外の患者の回答を見ると、「とてもそう思う/そう思う」が226名中41名で18.1%、情報の入手のしやすさをさらに下回る結果となりました。「そう思わない/全くそう思わない」は104名で46.0%とネガティブな反応が強まるデータとなっています。

ステージ1~3とステージ4の患者で回答の傾向に大きな開きはないため、5大がん以外の患者が情報や体験の共有に苦しんでいる現実が鮮明に浮かぶ結果となりました。

治療に臨む患者やその家族を孤立させないためにも、医師や医療機関によるコミュニティの設立が今後求められていくと推測されます。

がん種や進行度によって治療環境に不満があり、患者はその理由を知りたがっている

さて、ここからは治療に関する質問を取り上げてみたいと思います。

<自身のがん治療環境は他のがん種に比べ良いと思いますか?>

全体で見ると、「とてもそう思う/そう思う」が576名中314名で54.5%と、ポジティブな反応が過半数を超えていますが、5大がんと5大がん以外、ステージ1~3とステージ4の患者で回答の傾向が大きく異なる結果となりました。

5大がんの患者で「とてもそう思う/そう思う」のポジティブな反応が349名中232名で66.5%と過半数を大きく上回っているのに対し、5大がん以外の患者は「とてもそう思う/そう思う」が226名中82名で36.3%に止まり、一方で「そう思わない/全くそう思わない」は66名で29.2%と3割に迫る数字となりました。5大がん以外の患者は現在の治療環境にやや不満を覚えているようです。

ステージ1~3とステージ4の患者間でも同じような傾向が見られます。ステージ1~3の患者では、327名中201名の61.5%が「とてもそう思う/そう思う」と回答しているのに対し、ステージ4の患者では、「とてもそう思う/そう思う」が154名中73名で47.4%と過半数に届かない結果となりました。

一口に「がん」と言っても病気としては様々で、がん種やがんの進行度によって治療環境に差が出ることは仕方のないことだとは思います。しかし、その一方で、なぜ治療環境に差が出るのかという情報を患者やその家族は医師や医療機関に求めているのかもしれません。

最後に、医療機関の治験情報に関する実態について調査したデータを見てみましょう。

<治験情報の提供はありましたか?>

治験情報の提供はなかったという回答が大多数となる結果が出ました。治験情報の提供があったのは「がんセンター」「大学病院」「公立病院」「医院、クリニック等」の順で、病院の規模によって治験情報の提供が段々と減っているのがわかります。詳しい情報を知るためには専門の医療機関にかかる必要があるということでしょう。

まとめ ―がん治療には“正確”で“積極的”な情報の発信が求められる―

がん患者の情報収集に関する調査データをご紹介しました。5大がんと5大がん以外の患者で情報収集に大きな格差があることがわかりました。

がんという病気の性質上、積極的な情報開示が難しいことは最初にも言いましたが、現場の医師や医療関係者が思っている以上に、患者ががんについての情報を求めていることがわかります。むしろ正確性の求められる情報だからこそ、医師や医療機関から詳しい説明を受けることを患者は望んでいるようです。

がんの治療は、特に医師と患者の信頼関係が強く求められる現場です。医師と患者の信頼関係を築き、より強固なものとするためにも、医師や医療機関から正確で積極的ながん情報の発信が今後一層求められていくのだと思います。


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