現在、マーケティングとブランディングは同時に語られることが多いですが、実はその両者で目的とすることは異なります。しかし、その密接な関係からか、マーケティングとブランディングで共通する戦略を採用している企業も多いようです。ブランディングにおいては、正しく行えば長期的な利益を生む戦略となりますが、正しく理解していなければ、間違ったことに時間とお金、そして労力をつぎ込むことになります。今回は、ブランディングの手法を今一度見直すことで、どうすれば効果的なブランディングが行えるかについて考えてみたいと思います。

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ブランディング成功の法則は、顧客と企業の「共通」化にあり

ターゲットと目的を明確にすることが、ユーザーと企業の両者の利益につながる

まず、ブランディングとは「共通のイメージをユーザーに持たせる手法の総称」を指します。
では、なぜブランディングが今必要とされているのでしょうか?

ユーザーから見ると、商品やサービスのブランドが確立していることで、購入までの時間やコストを削減する「識別」、購入した際のリスク低減や回避に役立つ「品質保証」、そして、ブランドイメージを自己表現の手段とする「意味づけ」の3点で恩恵を受けることができます。

一方、企業にとってブランドが確立していることの価値は、競合他社との差別化に役立つこと、顧客のロイヤルティにより長期的かつ安定的な売り上げを確保できること、そして、プロモーションへの依存を減らし、プレミア価格による売り上げの増加を狙えることにあります。

ユーザーと企業両者の利益のために存在するのがブランディングなのです。

では、ブランディングには具体的にどのような手法があるのでしょうか?

一つ目は、「製品・サービスブランディング」です。商品のロゴやキャッチコピー、商品の開発を通じて、ユーザーに商品の付加価値やポジティブなイメージを伝え、認知させる方法です。

二つ目は、「企業ブランディング」です。ミッション・ステートメントやコーポレートサイト、コーポレートカラーなどを利用して、企業のブランドイメージを従業員や株主などのステークホルダーに認知してもらうための方法です。

3つ目の方法は、「パーソナルブランディング」です。企業に属する一個人のブランドイメージをステークホルダーに認知してもらう方法なのですが、企業に属するオリンピック選手などがこれに当たります。

最後に挙げるのが、「インナーブランディング」です。従業員への顧客志向の向上、従業員の満足度や愛社精神の向上など、企業の従業員に向けた内向きの方法です。
以上の4つの方法を活用しながら、ブランディングでは長期的な利益を目指します。

ブランディングを成功させるには、一貫した地道な取り組みが必要

では、実際にブランディングにどれほどの効果があるのか、具体的な成功事例を見てみましょう。

製品・サービスブランディングの成功事例で有名なものは「セブンカフェ」です。

2013年9月よりセブン-イレブンが開始したコーヒー販売サービスですが、翌年の2014年度には累計販売数が7億杯を達成するなど大きな成功を収めています。

セブン-イレブンが実際に行った製品ブランディングは次のようなものです。

当時、男性の顧客が中心だったコンビニ業界では、女性や高齢者を顧客として取り込むことが大きな課題となっていました。そこで、セブン-イレブンでは、まず従来の取扱商品を「デイリー」「プレミアム」「ゴールド」にランク分けし、ロゴを一新しました。次に、自社オリジナルの雑貨ブランド「ライフスタイル」を立ち上げることで、段階的に自社商品にプレミアム感を付与し、女性や高齢者へ商品の魅力を発信していきました。
これらの地道なブランディング活動が実を結び始め、セブン-イレブンにプレミアム感のあるコンビニというイメージが認知され始めたタイミングで「セブンカフェ」を投入したのです。
これまで築いてきたポジティブなイメージに加え、質の高いコーヒーをシンプルでおしゃれなコーヒーマシーンを使って淹れるというプレミアムな体験がブランドの確立につながったのです。これにより、男性はもちろん、女性や高齢者にもこのサービスは受け入れられ、大きく売り上げを伸ばすこととなりました。

次に取り上げるのは、インナーブランディングで成功したスターバックスの事例です。
スターバックスでは、創業者のハワード・シュルツが「従業員がスターバックスで働くことに誇りを持ち、満足度の高い職場環境で働くこと」を「顧客満足度」以上に重要視していました。

そこで、スターバックスで実際に行われたのが、人材育成のための研修です。研修では、自社商品やバリスタになるための基礎知識をレクチャーするだけでなく、「お互いを尊敬し、尊厳を持って働こう」というスターバックスのミッション・ステートメントを実践できるマインドを持った人材の育成に重点が置かれています。

スターバックスでは、このマインドをスタースキルと呼び、「自身を保ち、さらに高めていく」「相手の話を真剣に聞き、理解する努力を怠らない」「困った時は助けを求める」という3つの考えで構成される、このスタースキルを従業員が身につけることで、マニュアルに頼らない顧客満足度の高いサービスを体現しているのだといいます。

徹底した人材育成を行うことで企業文化を統一、それにより一貫した顧客満足度の高いサービスを提供することが可能となり、スターバックスが高いブランド力を獲得することにつながったのです。

まとめ ―ブランディングとマーケティングを混同してはならない―

さて、成功事例からブランディングには一貫した地道な取り組みが必要になることがわかりましたが、ただそれを模倣すればいいという訳ではありません。

ここで重要となるのは、マーケティングとブランディングは同時に語られることが多いですが、その位置づけは両者で全く異なるということを理解することです。

ブランディングは商品やサービスの持つ価値をターゲットであるユーザーの心情に訴えかけて、ポジティブな印象を残すことが目的です。

一方、マーケティングはターゲットとなるユーザーのニーズを正確に分析して、売り上げや利益を向上させることが目的です。

成功したブランディングが長期的な利益につながっていること、マーケティングとブランディングが同時に語られることが多いため、どうしても勘違いしがちですが、それぞれの目的に合わせて、それぞれの戦略を練ることが求められるのです。