WELQ

人々がインターネットで情報をリサーチすることが当たり前となった今、様々なメディアがインターネット上のユーザーに向けて医療に関する情報を発信しています。しかし一方で、医療機関に限らず誰でも発信することができるインターネットの世界には信頼性の低い情報もあり、情報の信頼性を揺るがすような問題が度々起こっています。2018年6月に厚生労働省により施行された改正医療法もそうした問題への対応の一つです。

中でも2016年末に起きたWELQ問題は当時大きな議論を巻き起こし、インターネットにおける医療情報の取り扱いにおけるターニングポイントとなりました。今回は、WELQ問題を振り返り、その後医療情報がどのように変わったのかについて考えてみたいと思います。

素人による不正確な医療記事が粗製乱造されたWELQ問題

まずは、WELQ問題についておさらいしておきましょう。「WELQ」とは、当時、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が運営していたヘルスケア情報キュレーションサイト。いわゆる、まとめサイトです。圧倒的な情報量が特徴で、医療情報を検索すれば必ず検索上位に表示される人気サイトでもありました。

しかし、2016年末にWELQが不正確な医療情報記事を大量に公開していたことが発覚します。「ブラックシードという健康食品はあらゆる病を治す」であったり「肩こりが酷いのは霊のせい」など、医学的根拠の無い低品質な記事が次々と暴かれ、SNS上で話題となりました。キュレーションサイトで大量に公開されていた記事のほとんどが、医療に関して素人のライターが書いたものだったのです。

医療情報は人の命に関わります。その医療情報に対する不誠実なメディア運営は、大きな批判を浴びることとなり、ネットにある医療情報の信頼性を揺るがす一大事件となりました。この騒動を受けて、運営元であるDeNAはサイトを閉鎖しています。

著者や監修者のプロフィールから信憑性を読み解く

それから約1年後の2017年12月6日、Googleは医療や健康に関わるネットの情報の評価方法を改善したことを発表しました。これにより不正確な医療情報に改善の兆しが見え始めます。それでも、完璧な対策には至っておらず、いまだに医学的根拠の無い情報が、検索結果に表示されている事例を確認することができます。

専門家であるならまだしも、医療知識のないユーザーは、情報の信憑性をどのようにして見極めれば良いのでしょうか。

内容の真偽は難しいにしても、医師の見地の下、しっかりと作られた記事であるのかを見極めることはできます。まず大事なのは、記事の著者は誰なのかに注目することです。医師が書いているのか、ライターが書いているのか。ライターであるならば、医療知識はどれほどあり、その分野における実績はあるのかどうか。記事に著者プロフィールがあれば、それらを確認してみましょう。

医師という肩書きがあればすべてを信頼していいわけではありません。その分野の専門でもない医師が記事を監修しているケースもあるからです。記事の内容が気になる際は、著者や監修者のプロフィールがどこまでたどれるかでその信頼性を確かめることができます。

インターネット上で禁止されている医療に関わる表記

また、医師によって意見の割れる内容も存在するので、同じテーマの記事を見比べるだけでは判断が難しい部分もあります。しかし、見極めるためのポイントはあります。改正医療法により、「国内最高峰の○○治療」や「○○満足度ランキング1位」、「必ず効果のある治療」などの煽り文句は不適切な表示として、医療広告規制の対象となりました。今、医師や医療機関が特に気を使っている部分です。ですから、文章中にこのような言葉が躍っている記事には、たとえ医師の監修があったとしても、気をつけた方がよいでしょう。

他にも、PR記事に関する問題があります。自社の商品やサービスを宣伝するために書いた記事がPR記事です。これ自体には何の問題もありません。しかし、商品のPRであることを隠し、ユーザーの不安を煽るだけ煽った後に、商品の購入へと誘導する悪質な記事が存在するのもまた事実です。いわゆる、ステルスマーケティングというやり方です。

医療に関するものであれば、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が必ず適用されます。そのため、このような商品購入へ誘導する記事では、薬機法に対してグレーな表現が使われることが多いのです。先に述べた医療広告規制に通じるものがありますが、第三者から見て客観的に効能及び効果があると明示できなければ、宣伝することができないのです。商品のPRであることを隠すような記事は信頼に値しないのです。

まとめ

WELQ問題では、他のサイトの情報をリライトして記事を量産するという方法が業界で横行していたという事実が明るみに出ました。WEB記事の作成はクラウドソーシングが中心になっており、責任の所在が曖昧になりやすい傾向があります。今求められるのは、コンテンツ制作者の矜持です。情報を受け取るユーザーのことを想像し、真に価値あるコンテンツを提供できるのか、その責任は重いのです。

WELQ問題を経て、医療情報を扱うサイトのスタンスには確実に変化が生まれました。大量の記事を公開することよりも、正確な情報を伝えることに重心が置かれるようになっています。それは検索エンジンのアルゴリズムにも反映されています。しかし、悪質な記事やその制作者がいまだ残っていることも事実です。ユーザーには自衛のための知識が、コンテンツ制作者にはその信頼を得るための矜持が求められていくでしょう。そして、これは医療に限らず、すべての分野で問われる責任なのだと思います。