開業医が体験したホームページ制作失敗事例

患者がWEBから自発的に情報を集め、病院・クリニックを選ぶようになった今、病院・クリニックにとってホームページの制作は必要不可欠のものとなっています。特に、開業したばかりであれば、まず存在を患者に周知する必要があります。すでに地域に存在する病院・クリニックとの差別化を図りながら、周知を進めるのは簡単なことではありません。中にはホームページの作成に多大な労力と時間をかけて、準備していたにもかかわらず、失敗したケースもあります。

今回は、開業医が経験したホームページの制作失敗事例を見ながら、ホームページの制作の際に、どのような点に気をつけるべきなのかを考えてみたいと思います。

自分たちのことを制作会社に理解してもらう

ケース1)開業準備で時間が無く、業者に丸投げ

Aクリニックでは開業するとき、たまたま営業電話をかけてきた制作会社に制作を依頼することにしました。開業の準備で忙しく時間が取れなかったため、制作はほぼ業者に丸投げ。制作会社と打ち合わせする機会もほぼ作りませんでした。しかし、実際に完成したサイトを見てみると、情報量が少なく自分たちの特色を伝えられているとはいい難い状態でした。

不満が残る内容であったものの、開業に合わせてホームページは公開する必要があったため、そのまま公開することに。修正したい箇所はたくさんありましたが、追加で費用がかかると言われ諦めました。その後、他の制作会社に依頼して全面リニューアルをして、今では満足する内容となっています。しかし、少なくないリニューアルの費用を負担することとなりました。

初めての開業は誰もがわからないことだらけで大変なため、丸投げにしてしまいがちです。ただし、ホームページは病院・クリニックの理念や特色を伝える大事なツールです。病院・クリニックの顔であり、名刺代わりとも言えます。しっかりと制作会社とコミュニケーションを取り、制作会社に自分たちのことを知ってもらわないことには、ホームページ上で自分たちの魅力を伝えることはできません。

医療広告ガイドラインをしっかり認識し準拠する

ケース2)医療広告ガイドラインに抵触し、厳しい指導を受けた

2018年6月に施行された改正医療法により、病院のホームページはすべて「広告」として扱われ、医療広告規制の対象となりました。特に、術前または術後の症例写真の取り扱いが厳しく規制されています。

歯並び矯正を売りにするB歯科では、その効果をアピールするために、症例写真を増やしたホームページに改修することに決めました。しかし、改修したホームページが治療効果の誤認にあたるとして、行政指導を受けてしまいます。症例写真を使ったページを公開停止にして対応したものの、コンテンツ不足が目立ち、結果として病院の評判を下げることになってしまいました。

これはB歯科とホームページの改修を行った業者の認識不足が原因となった事例です。新たな医療広告ガイドラインでは、症例写真の使用が禁じられたわけではありません。具体的な治療内容や副作用、リスクなどの詳細な説明の補足として、症例写真を使うことは今も認められているのです。

しかし、こうしたガイドラインに対する認識が不足していたため、十分な説明を加えずに、写真でアピールばかりしていたために指導を受けることになったのです。先の事例とつながる部分もあるのですが、病院のホームページ制作や改修を行う場合は、その目的のために正しい判断が下せる人間が必要となるのです。

綿密な連絡や打ち合わせができない業者は運用のリスク

ケース3)フリーランスの制作者に依頼したが、途中で消えた

日本でもクラウドソーシングサービスが一般的なものになり、そうしたサービスを利用してホームページの制作を依頼するケースも増えています。C病院では、昨今のインターネット環境を踏まえて、PC用しか用意されていなかったホームページをスマホ対応のものにリニューアルすることを決めました。クラウドソーシングサービスを使って制作者を募りました。

フリーランスのDという制作者は価格が安く、評価も高かったため、物は試しと仕事を依頼しました。最初のうちはメールによってDとも密な連絡が取れていたのですが、いざテストページを立ち上げるという段階で、急に連絡が途絶えてしまいます。緊急連絡先の携帯電話に伝言を入れても折り返しの連絡は来ず、遂には電話がつながらなくなってしまいました。

価格が安かったため金銭的な痛手は少なかったものの、制作のためにかけた時間は戻ってきません。これは業者でも同じことが言えます。契約を結ぶまでは熱心に通ってきた営業担当者が、制作が始まってからは一切顔を見せないという話も耳にします。

相手の顔がしっかりと見えない業者や制作者は、たとえ仕事が完遂したとしても出来が不十分なケースが多々あります。個人の制作者でも、しっかりと打ち合わせを行い、進捗を随時報告してくれれば、いいホームページを作成することができます。当たり前のことですが、しっかりと連絡が取れ、打ち合わせの時間も十分に取れる業者や制作者に依頼することが重要です。

ホームページ制作のスキルは目に見える部分だけではない

ケース4)ホームページによる集患の効果が全く無い

最後に紹介するのは、「いつまで経ってもクリニックの検索順位が上がらず、ホームページを見て来院したという話も聞かない」という事例です。

E皮膚科クリニックでは、皮膚炎に悩む患者のために、ホームページで症状に対する知識や対処法、治療法などを周知したいと考え、ホームページ制作に関して豊富な実績を持つ業者に依頼することにしました。コンテンツの作成にはE院長も積極的に関わり、納得のいくホームページが制作できたと最初は喜んでいました。

しかし、公開したもののホームページへのアクセスはほぼ0。来院した患者に聞いてみてもホームページの存在さえ知らないことが多かったのです。なぜこのようなズレが生じたのでしょうか?それはこの業者が優秀なデザイナーがいたものの、サイト制作について知見が乏しく、SEO対策が不十分だったのです。

ホームページ制作では、目に見えるビジュアルを整えること意外にもやるべきことがたくさんあります。受注者から見える部分はサイトのデザインなので、その出来で満足をする人が多いようです。しかしホームページはどんなにカッコいいものができたとしても、誰からも見られなければ何の意味もありません。患者を集め、認知させ、理解してもらい、訪問をしてもらう。本来の役割を果たすことができる制作会社に依頼することが必要です。

まとめ

ホームページ制作の目的を理解し、共に取り組むことのできる業者を選ぶことが重要
以上が、開業医が経験したホームページ制作の失敗事例となります。集患のためにホームページを制作するのは確かに病院にとって必要なことですが、それが患者の利益に必ずしもつながるとはいえません。

ホームページで患者のために何ができるのかという視点を常に忘れてはいけません。患者のニーズに応えていくことで初めて、病院のホームページが集患につながるのです。そのためには、ホームページを制作する目的を理解し、共に取り組むことのできる業者を選ぶことが重要なのでしょう。